客単価はなぜアップできるのか
客単価は、お店の大中小および繁盛店でもふつうのお店でも、平等に営業努力が比較できます。
イトーヨーカ堂やイオングループと比較しても、客単価については互角に、いやそれ以上の実績を残すことは可能です。
お店の大中小の差は客数の差で、売上の規模も決まってくるだけです。
ですから、売場の小さな店ほど、「顧客一人当たりの買上げ点数×平均単価」という視点が大切です。
「ロータス(蓮)・メソッド」では、すべての客単価を重視します。この章では、「売上=客単価×客数」にあった客単価部分をアップさせる方法を述べていきます。
前の章で「客単価=(買上げ点数×平均単価)÷客数」ということを述べました。そのなかの「買上げ点数÷客数=PI値」であることも述べました。
このPI値から、経営本位の客単価アップではなく顧客志向の売価設定を導き出すのが、今から説明する「客単価PI値」です。
客単価PI値を理解しよう
客単価PI値 = PI値 × 平均単価
PI値 = 買上げ点数客数なので以下の式で表します
客単価PI値 = 買上げ点数客数 × 平均単価
客単価を上げる選択肢はこの2つになる!
- 1PI値アップ
- 2平均単価アップ
従来の客単価の求め方
客単価 = 買上げ点数 × 平均単価客数
買上げ点数と平均単価が切り離されない関係に!
従来の方法では価格を上げるしか方法がなくなってしまうのです
図の内容をテキストで読む
- タイトル:客単価PI値を理解しよう
- 黒板:客単価PI値 = PI値 × 平均単価
- 店員の吹き出し:PI値 = 買上げ点数/客数 なので以下の式で表します
- ノート:客単価PI値 = 買上げ点数/客数 × 平均単価(客数に人のイラスト、平均単価に「¥」マークのトマトのイラスト)
- 客単価を上げる選択枝はこの2つになる! → ①PI値アップ ②平均単価アップ
- 従来の客単価の求め方:客単価 = 買上げ点数×平均単価/客数
- (従来の式の注記)買上げ点数と平均単価が切り離されない関係に!
- 男性の吹き出し:従来の方法では価格を上げるしか方法がなくなってしまうのです
客単価PI値=PI値×平均単価
例を挙げて考えてみます。500人の顧客が来店し、平均単価100円の商品Aを200人の顧客が購入したとします。
「PI値=買上げ点数÷客数」の式に当てはめると、「PI値=40%(0.4)」「平均単価100円」ですから、「客単価PI値=40」となります。
「PI値×平均単価=客単価」ですから、つまりは「売上=客単価×客数」にある客単価ということになるのですが、ここで注意してほしいのは単なる客単価ではなく、PI値から導き出しているという点です。言い換えれば、今までは単に「客単価アップ=売価アップ」という図式でしたが、この考え方を用いれば、顧客支持率を示すPI値と平均単価のバランスを考えながら客単価をアップすることができるのです。
客単価(売上)をアップさせるには、
- PI値をアップさせる
- 平均単価をアップさせる
の2つがあります。
もし、平均単価をアップさせたのちPI値が極端に下がってしまったならば、その商品は平均単価を上げるべきではなかった商品か、売り方が悪かったかが原因になっていると考えられます。
こうして、すべての商品に対してPI値と平均単価のバランスを試行錯誤していくことが、結果的に顧客の声を無視しない売り方となるのです。
エブリデイ・マーケット(毎日の食生活)業界のお米を例にとって考えると、123ページのように商品を区分けすることができます。
①は魚沼産コシヒカリ
②はそのほかの新潟産コシヒカリ
③はそのほかの産地のコシヒカリ
「ロータス・メソッド」では、グラフの①〜③に当たる部分の商品を多くすることが理想とされます。平均単価とPI値のバランスがとれた商品だからです
③の商品は、平均単価は低いですが、PI値のもっとも高い商品で、ここを強化することにより、客数がアップするはずです。
マーケティング用語でいえば「フロントエンド商品」です。私のビジネスでいえば「店頭戸板商品」になります。
もっとも、店頭戸板といっても、実際には戸板は使用していませんが。
①は「バックエンド商品」です。エブリデイ・マーケットなら「セレクト商品」になります。お店側で選び抜いて、顧客にも支持がある商品です。
「フロントエンド商品」と「バックエンド商品」の次に②の「ミドルエンド商品」が大切になってきます。
PI値と平均単価のバランスがとれた商品
あなたの商品でそれぞれどこにあるかを考えてみましょう
1 魚沼産
平均単価がもっとも高く、PI値が0.25%前後という商品2 新潟産
PI値が0.5〜0.75%前後で、価格が2000〜3000円前後という商品3 そのほかの産地
PI値が1.0%以上で、1000円台の商品SHOICHI SUZUKI
図の内容をテキストで読む
- タイトル:PI値と平均単価のバランスがとれた商品
- グラフ:縦軸=平均単価(目盛り 2000・3000・4000)、横軸=PI値(目盛り 0・0.25・0.50・0.75・1.0(%))
- 左上から右下へ下がる「客単価PI値曲線」の上に、①魚沼産コシヒカリ(左上)、②新潟産コシヒカリ(中ほど)、③そのほかの産地のコシヒカリ(右下)
- 店員の吹き出し:あなたの商品でそれぞれどこにあるかを考えてみましょう
- ①平均単価がもっとも高く、PI値が0.25%前後という商品
- ②PI値が0.5〜0.75%前後で、価格が2000〜3000円前後という商品
- ③PI値が1.0%以上で、1000円台の商品
- ©SHOICHI SUZUKI
マクドナルドを教訓にしよう
平均単価をむやみに下げたり上げたりして苦戦しているのがマクドナルドです。
マクドナルドはまさに、デフレの影響を受けて激安商法に乗っかってしまったものです。しかも、激安をCMで大々的に流してしまったため、その後値段を元に戻したことが、客数を大幅に下げることになってしまいました。
実は、ハンバーガーとチーズバーガーを値下げしたこと自体は間違いではありません。PI値をアップさせる方法は、実は「ロータス・メソッド」にあります。以下、それについて説明していきましょう。
マクドナルドは、旧価格のフロントエンド商品(主力SKU)を値上げしました。
ハンバーガー 59円→80円に値上げ
チーズバーガー 79円→120円に値上げ
価格以外の要素も大切
マクドナルドの戦略
↓ そのまま価格を上げる
お店のイメージとして、割高感を与えてしまった!
↓
客数が減る
ロータス・メソッドの考え方
- 売値はそのままで販促を控える
- 注文時と店内掲示のメニューを目立たない位置に
↓ 売値はそのままでPI値を下げる
- 1売値を上げず、商品の位置付けを変える
- 2従来より品質のいい、付加価値のついた商品を開発する
(例:80円のプレミアム・ハンバーガーなど)
↓
顧客は満足する
ポイント
- 売価を動かさずにPI値を落とす
- 客数を落とさない
- 代替商品を投入・育成し、利益を稼ぐ
図の内容をテキストで読む
- タイトル:価格以外の要素も大切
- マクドナルドの戦略
- フロントエンド商品 59円 →(そのまま価格を上げる)→ フロントエンド商品 80円
- お店のイメージとして、割高感を与えてしまった! → 客数が減る
- ロータス・メソッドの考え方
- フロントエンド商品 59円
- 売値はそのままで販促を控える
- 注文時と店内掲示のメニューを目立たない位置に
- →(売値はそのままでPI値を下げる)→ バックエンド商品 59円
- ①売値を上げず、商品の位置付けを変える
- ②従来より品質のいい、付加価値のついた商品を開発する(例:80円のプレミアム・ハンバーガーなど)
- → 顧客は満足する
- フロントエンド商品 59円
- ポイント(黒板)
- 売価を動かさずにPI値を落とす
- 客数を落とさない
- 代替商品を投入・育成し、利益を稼ぐ
マクドナルド店全商品70〜90SKUのうち、フロントエンド商品(主力SKU)のわずか2商品の値上げで、お店は割高なイメージに変わってしまいました。
ストアイメージを落とす→客数減(売上・利益減)
「ロータス・メソッド」ならば、フロントエンド商品(主力SKU)のハンバーガー(59円)、チーズバーガー(79円)の売価はそのまま据え置きます。
そして、ハンバーガー、チーズバーガーのPI値を30〜50%落とす政策をとります(PI値は推定)。この2商品については、売価はそのままにプロモーションを大幅に控えてPI値を下げていきます。それは以下の3点です。
- 店内ポスターで宣伝しない
- メディアを使って宣伝しない
- 店外旗を出さない
すると、客単価PI値は次のように下がります。
ハンバーガーの客単価PI値=25%(PI値)×59円=14.75円
チーズバーガーの客単価PI値=15%(PI値)×79円=11.85円
さらに、ハンバーガー、チーズバーガーのPI値を大幅に削減させていきます。
- メニューの位置を右下か左下に小さく掲示
- 店内のメニュー掲示板も、右下の一番隅に持ってくる
これにより、PI値は半分になり、客単価PI値は以下のようになります。
ハンバーガー客単価PI値=12.5%(PI値)×59円=約7.38円
チーズバーガー客単価PI値=7.5%(PI値)×79円=約5.93円
この2商品の位置付けをフロントエンド商品からミドルエンド商品に変えていきます。
しかし、マクドナルドは、フロントエンド商品に極端に力点をおきすぎました。野菜ビジネスならば「バラ売り」のやりすぎと同じことです。
マクドナルドは、顧客には迷惑かけず(売価アップせず)に、2商品の位置付けを変えていけばよかったのです。
「えっ!? これじゃ売上をダウンするだけじゃないの?」
もちろん、その後の作戦があります。
ミドルエンド商品とバックエンド商品をバランスよくミックスしながら、別の商品をフロントエンド商品の方向に持っていけるよう販売するのが正解です。
そこで具体的な方法としては、2商品のPI値を下げる過程で、それに代わるフロントエンド商品を開発すればよかったのです。つまり、80円の「プレミアム・ハンバーガー」と120円の「プレミアム・チーズバーガー」などです。
商品名はその道のプロにまかせるとして、より品質のよい、従来のものよりも付加価値のついた商品を開発するのです。
そこに広告費やポスターなどの戦略を加えます。これが客単価と客数をアップさせる「ロータス・メソッド」の戦略なのです。
ハンバーガーとチーズバーガーを値上げした結果は、トータルで売上減になってしまいました。
ハンバーガーの売上=PI値(30%ダウン)×平均単価(136〜152%アップ)×客数(大幅ダウン)
もう一度、「ロータス・メソッド」の戦略をまとめてみます。
①品揃えを変え、PI値を上げる
②客数を落とさない
③売価は動かさず、PI値を落とす(新商品の導入・入れ換え)
つまり、「客単価=売価アップ」ではないのです。
「ロータス・メソッド」を活用すれば、マクドナルドもこれほどストアイメージを落とすこともなかったのではないかと思います。
たとえ客単価を維持しても、客数を落としてはならないのです。
エブリデイ・マーケットの価格アップ政策は、客数を減らさない戦略を優先し、最後の手段として従来の売価を見直す(値上げ・値下げ)のが基本です。
客単価をアップさせるうえで大切なこと
とくに、エブリデイ・マーケットの食品の世界では、客単価PI値が大切です。
客単価PI値=商品売上÷顧客数(単位は円)
客単価PI値を考える場合、次の2つがポイントになります。
- 計算式の分子に当たる商品売上は、まずはアイテムの売上を入れる
- 計算式の分母に当たる顧客数は、あなたのビジネスの全体顧客数から始める
まずは、この2つを押さえたうえで、あなたの商品の客単価PI値を出してください。
私の野菜ビジネスでは、客単価PI値が20円を超える商品は5品ほどしかありません。そのうち、トマトは代表的商品です。
また、客数を年間来店顧客数にすると、客単価PI値から年間の売上を出すことができます。
年間売上=客単価PI値×年間来店顧客数
この客単価PI値の単位は円ですから、客単価PI値を1円上げるだけで、年間数十万から数百万、もしくは数千万から数億円の売上が上がるのが客単価PI値のおもしろさです。
私のお店は、年間250万人以上の顧客が来店されますから、トマトの客単価PI値を1円上げただけで、250万円の現金が集まります。
限定した4品だけ、客単価PI値を1円上げただけで、年間で1000万円が集まってきます。
これがエブリデイ・マーケットの醍醐味でもあります。しかも、グラフ上では顧客支持率(PI値)は保っているわけですから、この1円アップは顧客のその商品に対する割高感にはつながっていきません。
あなたのビジネスでも同じことが可能です。
客単価PI値を、まず1円上げてみることを目標にしてください。
次に、客単価PI値アップの方法を述べます。売価を上げずに、客単価を上げることは可能です。
売価を上げずに平均単価をアップするには、
- 品揃えを変える(PI値を変える)
ことです。つまり、PI値を下げても平均単価をアップさせた場合、それに代わるPI値をアップさせる商品を組み入れていけばよいのです。
「ロータス・メソッド」の根幹は品揃えです。商品の組み合わせ(コーディネイト)です。
PI値では、この組み合わせを「パワーアイテム」といいます。
商品をパワーアイテム化しよう
PI値アップはあくまでも手段で、本来の目的は顧客満足度のアップにあります。
具体的手法は、フロントエンド(店頭)とバックエンド(店内)の商品のパワーアイテム化になります。アイテムとは、顧客が考えられる商品の最小分類です。
パワーアイテム化とは、
- アイテム単位で考える
- アイテムの客単価PI値を最高の状態にする
- 手段として、PI値・平均単価・客単価PI値のバランスを考える
私の行なっている野菜ビジネスでは、パワーアイテム化のことを「新戸板商法」と呼んでいます。
戸板1枚の客単価(利益)の最高値を目指しています。
エブリデイ・マーケットの食品の世界なら、PI値は、アイテムで10%以上を目標とします。前述したように、単品(SKU)では、PI値10%以上の商品は、食品1万品のなかで、10品未満しかないのが現状です。
単品をグループ化したアイテムのPI値10%以上が、商品のパワーアイテム化になります。
あなたもPI値をとり続けると、パワーアイテムが何になり、何品あるかがわかってくるはずです。フロントエンド(店頭)商品とバックエンド(店内)商品のパワーアイテム化から始めてください。
品揃えについては、オンリーワンのアイテムを作っていってください。
「PI値を活用すると、品揃えが似てしまうのではないか」と心配する人もいますが、そんなことはありません。
- 「フロントエンドSKU(単品)」は、商品構成が似てくる
- 「ミドルエンドSKU」は、あなたのお店の独自なものを採用する
- 「バックエンドSKU」にいたっては、まったく独自な商品を採用する
以上のフロントエンドSKU・ミドルエンドSKU・バックエンドSKUで、3〜5品を品揃えします。SKUとは、メーカー、流通業者が作る商品の最小分類です。
フロントエンドSKU・ミドルエンドSKU・バックエンドSKUのPI値の合計は、10%以上を目標とします。これらの商品群が、アイテム別全体の売上が50%以上になれば、もう立派なパワーアイテムです。
客数アップの出発点は「内部客数アップ」
客数アップというと、あなたはチラシやポイントカード、○○市などを思い浮かべませんか。
「ロータス・メソッド」は、それらの客数アップの手法とはまったく違うアプローチをします。
客数アップの対策で一番大切なのは「内部客数アップ」です。
言い換えれば、今来店していただいている顧客の購買範囲を増やすことです。
私のビジネスでいえば、全顧客のうち90%が野菜を購入します。10%の方は購入しません。
この90%を1%増やし91%にできないかを考えることが、内部客数アップということです。
果物は、50%の方が購入します。ということは、50%の人が購入していないのです。
ここを「あと5%増やせないか」と考え、いろいろと手を打つのです。
ふつう客数アップというと、いかに新規顧客を増やすかに終始してしまうのですが、まだ来店したことのない顧客を増やそうと考える前に、現時点で来店していただいている顧客に買ってもらうことを考えるのです。
この内部顧客を表す数値を「客数PI値」といいます。この数値は、
客数PI値=部門客数÷全来店客数(%)
で表せます。簡単にいうと、ある商品を買った顧客数は、全来店顧客(レジ通過客数)の何%に当たるかのPI値で、政治の世界、選挙でいえば、どの候補に1票投じたかです。
客数PI値は何人のお客さまが買ってくれたのかという、もうひとつのメッセージです。
この客数PI値は、これからのビジネスでは、とても重要な指標となります。
なぜならば、全来店顧客数の要因になる天候や景気、競合状況などの外部環境に左右されない指標だからです。
「今日は雨だから来店客数が少なくて売上ダウンだな」
「今の時期は、うちの商品は売れないな」
「今日はチラシを撒いていないから少ないな」
などというグチは通用しないことになります。
あなたも、まず客数PI値をアップさせることを考えましょう。
この客数PI値は、エブリデイ・マーケットや、店舗を持つ方なら、
- 店全体のレイアウト
- 棚割
を工夫していくことが大切なポイントになります。フードサービスなら、
- メニュー作り
- ポスター
になるでしょう。
なぜ客数PI値が大切になるかというと、
- PI値アップに直接関係する
- 客単価アップに直接影響する
の以上2つの理由からです。
来店回数を増やせば、新規顧客の獲得につながる
ふつう客数を考えるとき、次の4つの要素があります。
- ベース顧客(既存客)
- フレッシュ顧客(新規客)
- エンド顧客(離反顧客)
- 来店頻度
4つの要素をもとに、客数を出す式は、次のようになります。
客数=(ベース顧客−エンド顧客+フレッシュ顧客)×来店頻度
来店頻度とは、2日1回とか、3日に1回とか、1週間のうち1回買い物をするとかで決まります。
この来店頻度を高める具体策に「PI値の高い商品を強化すること」があります。
しかし、何度もいうように、客数アップは足し算になる部分、つまりフレッシュ顧客をいかに増やすかばかりに目が向いてしまいます。
でも、考えてみてください。来店頻度を増やしたほうが足し算ではなく掛け算になるので、来店頻度をいかに増やすかを考えたほうがすごいということがあなたにもわかるでしょう。
つまりPI値アップは、顧客の来店頻度アップとも一致しているのです。
客数アップは、PI値の高い商品を見つけるところから始まります。
エブリデイ・マーケットの食品の世界でいえば、全商品1万品のうち、顧客の1割以上売れる商品10品未満に絞られます。
これら10品未満の商品の強化以外に、客数アップの突破口はありません。まずは10商品によって顧客にお店に来てもらう回数を増やすのです。
PI値の高い商品を、私は「店頭戸板商品」と位置付けています。
マーケティング用語でいえば、「フロントエンド商品」です。
続いて、顧客の1%以上売れる商品を強化します。全1万商品のうち200品前後にあたるもので、これらの商品を「店内戸板商品」と位置付けています。
マーケティング用語でいえば、「バックエンド商品」です。
食品業界では、まず顧客の10%以上売れる商品を強化し、次に1%以上売れる商品に力を入れることが客数アップの第一歩です。
あなたの業種・業態でも、このフロントエンド商品とバックエンド商品を見きわめる必要があります。
以上が、客単価と客数アップの考え方です。このあと具体的な実践になりますが、ここで一息入れてください。
実践!顧客支持率アップ法
PI値はPI値だけの単体で存在しません。価格(平均単価)やレイアウト・演出などさまざまな要因でアップダウンします。
PI値のアップは、以下のような要因を改善していくことにより可能になってきます。
- 欠品しない
- 過剰在庫にしない(品質鮮度を保つ)
- 適正な価格をつける
- レイアウトを工夫する
- POP・チラシ・メニュー・DM・ポスターで演出する
あなたのビジネスに当てはまるものがいくつかありますね。また、ホームページやパンフレットなどにも応用することができます。
1. 欠品しない
欠品しないことは、売れ筋アイテムのPI値を下げないためには欠かせない管理です。たとえば、野菜ビジネスでいえば、一番PI値の高い商品はトマトですから、まずはこのトマトを欠品させてしまうことは、そのときのPI値を確実に下げてしまいます。
もともと顧客支持率の高い商品なのですから、レジ通過顧客が1000人で10%のPI値であれば、このときの欠品はトマト100個分の売上を失うことになるのです。
「ロータス・メソッド」では、PI値10%以上の10品未満の商品とPI値1%以上の200品前後の商品は、つねに欠品をしないよう在庫チェックをする必要があります。
- フロントエンド商品……PI値10%以上の商品(10品未満)
- バックエンド商品 ……PI値1%以上の商品(200品前後)
2. 過剰在庫にしない(品質鮮度を保つ)
逆に、PI値の低い商品に関しては、つねに過剰在庫にならないようにします。
とくに、「この商品は売れる!」という売り手の固定観念にとらわれて大量発注するということがありますが、これは「顧客の声」を無視したものです。
PI値が低いとは顧客支持率が低いということですから、その商品を販売してもPI値はアップしません。
野菜ビジネスの例をとると、こうした商品に関しては、徹底的に品質鮮度を保つ(過剰在庫にしないということにもなります)、単品(SKU)構成を変えてみるということをします。単品構成とは、たとえばバナナを販売する際に、まるごと1房なのか、2分の1なのか、4分の1なのか、アイテムから単品に落とし込むことによって、PI値の高いものを多くするのです。
また、場合によっては2本売り、3本売りでもよいのです。それでPI値が高くなるというのであれば、顧客の支持率が高いということだからです。
あなたの売る商品が過剰在庫を抱えたものであるならば、それはパッケージに新鮮さがないとか、まとめ売りのほうがいいなどの問題点があるのかもしれません。
PI値はこのような声を的確に伝えているメッセージといえます。
3. 適正な価格をつける
客単価PI値の項でも説明しましたが、PI値から適正な価格をつけることができます。もし、平均単価が低くPI値が高い商品であれば、どこまで価格帯を上げてよいかをPI値で判断することができます。
また、平均単価が高くPI値が低い商品であれば、どこまで価格帯を下げればもっとも高いPI値が得られるかを、価格帯を少しずつ変えることによってテストしてみるのです。
こうしたデータをとり続けると、適正な価格帯というものがわかるようになります。
また逆に、PI値からその商品の評価もできます。
PI値と価格による商品の評価は、次ページにある図になります。
図からもわかるとおり、PI値・平均単価が高く、客単価PI値の高い商品が最良で、PI値・平均単価が低く客単価PI値が低い商品が最悪であることがわかります。また、パターン4はPI値アップを目指すよい商品です。よく陥りがちなのは、最良の商品についても価格競争に巻き込まれ、価格を下げてしまうことです。
適正な価格がわかる
| パターン | PI値 | 平均単価 | 客単価PI値 |
|---|---|---|---|
| パターン1 | ↗ | ↗ | ↗ ○○○(最良) |
| パターン2 | ↗ | ↘ | ↗ ○○(かなり良い) |
| パターン3 | ↗ | ↘ | ↘ ×(悪い) |
| パターン4 | ↘ | ↗ | ↗ ○(良い) |
| パターン5 | ↘ | ↗ | ↘ ××(かなり悪い) |
| パターン6 | ↘ | ↘ | ↘ ×××(最悪) |
SHOICHI SUZUKI
図の内容をテキストで読む
- タイトル:適正な価格がわかる
- 列:PI値/平均単価/客単価PI値(矢印↗=高い・上がる、↘=低い・下がる)
- パターン1:PI値↗、平均単価↗ → 客単価PI値↗ ○○○(最良)
- パターン2:PI値↗、平均単価↘ → 客単価PI値↗ ○○(かなり良い)
- パターン3:PI値↗、平均単価↘ → 客単価PI値↘ ×(悪い)
- パターン4:PI値↘、平均単価↗ → 客単価PI値↗ ○(良い)
- パターン5:PI値↘、平均単価↗ → 客単価PI値↘ ××(かなり悪い)
- パターン6:PI値↘、平均単価↘ → 客単価PI値↘ ×××(最悪)
- ©SHOICHI SUZUKI
むしろ注目すべきは、PI値が高くても、客単価PI値が低いパターン3の商品です。
まずはこの商品の客単価PI値アップを考え、一人でも多くの顧客に買っていただく努力をすべきです。そのうえで、平均単価を上げていけば、客単価がアップした商品に近づくのです。
4. レイアウトを工夫する
現在、商店街の活性化はどの本や記事を見ても、イベントや福引き、一斉大売出しのノボリ、アーケードにおけるオブジェや照明による環境演出が話題にされています。
たしかに集客したいという気持ちはわかりますが、本当に売上につながっているでしょうか。
いくら顧客を集めても、お店そのものに工夫がなければ経費ばかりがかかって逆に赤字になりかねません。
集客に成功しても本当の顧客獲得にならないのはなぜでしょうか。
問題は、各店のレイアウトがうまくいっていないからです。
つまり、PI値の高い商品が店の奥に並べられているのです。せっかく顧客支持率が高い商品があるのに、それが顧客の目に入らなければ売れるものも売れません。
データ(PI値)がなければ、それもいたし方がないことなのかもしれませんが。
エブリデイ・マーケットのレイアウトの基本は、
- 客単価PI値を最高にする(顧客の支持や価値と店側の利益が一致)
- PI値を優先する
- 客数PI値とPI値を高いものを一致させる。
の以上、3つがポイントです。
エブリシング・マーケット(すべての商品)では、たとえば、フロントエンド、ミドルエンド、バックエンドの商品を、いかに上手くつなぎ合わせるかがポイントです。その際に、
- PI値を優先する
- 客単価PI値最高を目指す
- 客数アップを同時に達成する
の以上を参考に、あなたのビジネス商品の最高レイアウト、パワーレイアウトを、ぜひ構築してみてください。
具体的には、PI値の高いものを店の入り口に固めます。そこから誘導される導線上の棚にカテゴリー別にPI値の高いものから目に入るような仕掛けをします。
顧客は、棚の隅などには目が届きませんから、そこにPI値の低いものを陳列していきます。また、PI値の低いものでも、テスト的にPI値の高い商品群のなかに数点おいてみます。
これらの商品は、毎日のデータを見ながら変えていくことも可能です。
先に述べた商店街活性化の問題でも、PI値を商店街全体のデータとして集めて、商店街全体で共同チラシを作ってみてもいいでしょう。
「マイデータをとる」ことの大事な点は、PI値のデータが業種を超えて活用できるということです。
5. POP・チラシ・メニュー・DM・ポスターで演出する
◎POPで支持率アップ!
POPはPI値の高い商品を来店する顧客にアピールする絶好の手段です。
PI値は顧客の支持率を示すものですから、「激安!」「タイムサービス品」などと書く必要がありません。適正価格を大きく表示してあげれば、顧客は安心して買ってくれます。
また、価格は大きく見やすくすることがポイントです。PI値の高い商品はお店の看板商品になるのですから、POPも大きくし、PI値の高い順に顧客にアピールしていくのです。
逆に、PI値の低い商品は価格だけでなく、商品の説明などを書いていきます。
パワーレイアウト
入り口付近からPI値の高い順に商品を配置し、バックヤードからの作業導線上にはPI値の比較的低い商品を置いて作業をしやすくする
図の内容をテキストで読む
- タイトル:パワーレイアウト
- 説明文:入り口付近からPI値の高い順に商品を配置し、バックヤードからの作業導線上にはPI値の比較的低い商品を置いて作業をしやすくする
- 店内図(左の壁沿い・下から上へ):サラダコーナー(ブロッコリー、大根、セロリ、きゅうり、トマト、レモンの絵)→(もやし)→ 葉ものコーナー(ほうれん草、キャベツ、ニラ、青菜の絵)
- 店内図(上の壁沿い):キノココーナー(きのこ類の絵)
- 店内図(中央の島・上から下へ):土もの(ごぼう、かぼちゃ、かぶの絵)→ 季節野菜コーナー(ピーマン、なす、かぶの絵)→ フルーツコーナー(キウイ、バナナ、ぶどう、みかんの絵)
- 店内図(右上):バックヤード(売場との間に上下の両向き矢印=作業導線)
- 店内図(右の壁沿い):卵、パック品、しょうが、豆腐、ねぎ、白菜の絵。その先にお米
- 店内図(右下):レジ
- 動線の矢印:下の入り口付近から中央の通路を上へ(↑)→ 上の通路で右へ曲がる(↱)→ 右側の通路を下へ(↓)→ レジ
今はパソコンがあるのですから、POPのデザイン性や配色なども自由に変えることができます。POPに統一感を持たせて大きさだけ変えていくのか、PI値の高い商品のPOPを特化させるのかは、業種によって異なるでしょう。
とくに小さなお店ほどスペースに限りがあるので、POPには神経を使ってください。
- PI値の高いアイテムほど少し大きめなPOP
- PI値が低い商品はPOPを小さくして、PI値を高める方法をとる(コメントなど)
- コメントには「激安」「特価」などは使わない
PI値によって、POPの大きさにメリハリをつけるのがポイントです。POPの役目として、
- 価格の訴求
- 価値の訴求
の2つの役目があると思います。
とくに、価値の訴求面では、POPの用紙が重要になります。
私は、黄色のバックに赤い数字は、安売り屋のPOPのように見えるのでひかえています。品質のよさを表現できないからです。
これは、第2章の「育児子育てイメージ法」でも述べた、あなたのお店のイメージした「色」とも重なってきます。
私のお店の例でいえば、野菜や果物を販売していますから、なるべく色を揃えた統一的なPOPを作っています。
それですと、POPの大きさでお客さまの目をひくことができ、かつ割安感を感じてもらえます。POPにスタッフからのおすすめの一言を加えれば、一押し商品からPI値の低い商品への誘導も可能になります。
◎チラシで支持率アップ!
あなたも日頃からスーパーマーケットのチラシなどを見ていると思いますが、どんな感想を持たれているでしょうか。
- 激安目玉品を軸に、すべての商品を全部盛り込もうというチラシ
- 均一セールと題して、100円、200円、500円などの領域で区切って商品を紹介するチラシ
- タイムサービスの目玉商品を羅列して、激安感をあおるチラシ
- すべて手書きにして目をひこうとするチラシ
- ただただ、商品のラインアップを紹介するチラシ
など、画一的なものが多いと思います。
しかし、顧客の視点から考えて、果たしてこうしたチラシは有効でしょうか。
そうです。激安を売りにしたチラシであれば、もし同じ日に他店がさらに安いチラシを打っていれば、顧客はそちらに流れてしまう可能性があります。
POPの基本
〜フロントエンド商品を目立たせる〜
フロントエンド商品は
大きくインパクトを!
- 1顧客支持率の高い商品なので価格で割安感を伝える
- 2「激安」などの言葉は入れない
バックエンド商品は
ミドルサイズでさり気なく!
- 1商品説明(特徴・利便性・使い方など)を入れる
- 2店長、スタッフのおすすめの言葉を入れる
- 3季節感、商品イメージを伝えるデザインにする
小さなお店は、POPをおくスペースに限りがあるので、大きさ(大・中・小)にメリハリをつけることが大切
図の内容をテキストで読む
- タイトル:POPの基本
- サブタイトル:〜フロントエンド商品を目立たせる〜
- POP(大):トマト(愛知産)200円(価格の下に太い下線、ペンの絵)
- 見出し:フロントエンド商品は大きくインパクトを!
- ❶顧客支持率の高い商品なので価格で割安感を伝える
- ❷「激安」などの言葉は入れない
- POP(中):えだまめ(静岡産)500円(価格の下に説明文の線)
- 見出し:バックエンド商品はミドルサイズでさり気なく!
- ❶商品説明(特徴・利便性・使い方など)を入れる
- ❷店長、スタッフのおすすめの言葉を入れる
- ❸季節感、商品イメージを伝えるデザインにする
- 指し棒を持った店員の吹き出し:小さなお店は、POPをおくスペースに限りがあるので、大きさ(大・中・小)にメリハリをつけることが大切
売りたい商品を所せましと並べれば、どれが安くてどれが顧客にとって本当に必要なものなのかわからなくなってしまいます。手書きにしても同じですし、均一セールにしてもその商品自体に割安感は生まれません。
「ロータス・メソッド」ではチラシ=メッセージです。
チラシ作りのポイントとして、
- PI値の高い商品の掲載
- PI値の最低掲載基準をもうける
- 必ずメッセージを入れる
- 商品掲載前にメッセージありき
- 激安、特価、日替わりなどの表現は使わない
- 紙面を考慮して、メッセージチラシは掲載品目数を絞り込む
の以上がポイントです。
たとえ、新聞折り込みをしない店舗でも、店内手配りでもいいですからメッセージチラシの配布をおすすめします。
メッセージチラシは、顧客との大切なコミュニケーションの手段だと思うからです。
161ページのチラシは、私の店で作成しているものですが、販売しているものすべてをチラシに掲載しません。一番顧客に支持されて、なおかつ買っていただける商品、つまりPI値の高い商品を中心に載せます。
PI値が5〜10%以上の商品を絞り込んで掲載します。これはもちろん、その商品のPI値を高めることが目的です。
むろん、すべての商品を売りたいのはどこのお店も同じですが、チラシに載せられなかった商品は来店されてからの勝負になると考えたほうがいいのです。
あなたのお店のチラシはどうでしょうか。
顧客の視点に立ったものですか? それとも売りたい商品を載せていますか? または、低価格競争に巻き込まれていますか?
「ロータス・メソッド」は、PI値という軸を持っているために、いろいろな要因に左右されることなく、わが道を進むことのできるメソッドなのです。
◎メニュー・DM・ポスターで支持率アップ!
メニュー・DM・ポスターこれらについても同じことがいえます。
たとえば、飲食店のメニューや、カタログ説明を必要とする業種の方であれば、カテゴリー別に商品を紹介するのではなく、PI値の高いものが目立つような形で出すべきです。
データのうえからも、顧客に支持率の高い商品ですから自信を持っておすすめできるはずです。
PI値の高い商品をポスターという形で顧客に訴えるのもひとつの方法です。
DMにしても、品質のいい商品こそが顧客のほしいものだというのは勘違いで、支持率の高い商品が一番いい商品ということなのです。
PI値の低い商品の紹介は少しにとどめ、レスポンスをデータ化していくのです。これは、いわばテスト販売のようなもので、データを集めることにより掲載した商品のPI値を知り、アップさせる方法を考えていけばよいのです。
顧客に親切なチラシの配置
実際のチラシはこうなる!
原書ではこのあと、この考え方で作ったヴェルジェの実物チラシ「野菜ソムリエ」の写真が掲載されています(Web版では写真を省略しています)。
図の内容をテキストで読む
- タイトル:顧客に親切なチラシの配置
- 上段(配置の模式図):上部に見出し枠。中段に大きな枠2つ(大根の絵/さつまいもの絵)、矢印で「フロントエンド商品は大きく!」。下段右に小さな枠2つ(じゃがいもの絵/ピーマンの絵)、矢印で「バックエンド商品はさりげなく」。鉛筆の絵
- 下向きの太い矢印
- 下段:実際のチラシはこうなる!(野菜ソムリエのチラシ写真)
PI値のデータは、きっと正直に答えてくれるはずです。
あなたの商品を顧客の声で区分けする
売上をアップさせるには、「PI値をアップさせる」か「平均単価をアップさせる」かということを先に述べましたが、「PI値と平均単価」のグラフを使ってPI値アップのポイントを書き出すと全体が見えてきます。
次ページのグラフは、PI値と平均単価から商品を①〜⑥の6つのエリアに区分しています。まず大切なのは、客単価PI値曲線の右側にある①〜③の商品です。①はバックエンド商品、②はミドルエンド商品、③はフロントエンド商品で、これらを全体的に右上に移動していくことが売上をアップにつながります。つまり、客単価曲線を右上に引き上げていくということです。
平均単価を少しずつ変えていきながらPI値の変化をデータ化していくと、その商品の一番適正なエリアがわかるようになります。もちろん、レイアウトやPOPなどの工夫によりその位置が変わってくることはいうまでもありません。
売上をUPするためには…
PI値UPか平均単価UPのどちらかを選んで確実に売上を伸ばそう!
※Ⓐは客単価PI値曲線=PI値×平均単価を表しています。
SHOICHI SUZUKI
図の内容をテキストで読む
- タイトル:売上をUPするためには…
- 縦軸:平均単価(上ほど高い)/横軸:PI値(右ほど高い)
- 基準線:横軸の「基準値」から縦の点線、平均単価の基準を示す横の点線
- Ⓐ※:右下がりの曲線(客単価PI値曲線)。その右上に、引き上げた後の曲線を点線で表示
- ①(左上・曲線の右側、笑顔1つ):右向きの太い矢印「PI値UP!」
- ②(中央上・曲線の右上、笑顔3つ):Ⓐから右上への矢印「粗利PI値UP」
- ③(右下寄り・曲線の右側、笑顔2つ):上向きの太い矢印「平均単価UP!」
- ④(左上・曲線の左側、困った顔2つ)
- ⑤(左下・曲線の左側、困った顔3つ)
- ⑥(右下・曲線の下側、困った顔1つ)
- 吹き出し:PI値UPか平均単価UPのどちらかを選んで確実に売上を伸ばそう!
- 注:※Ⓐは客単価PI値曲線=PI値×平均単価を表しています。
- ©SHOICHI SUZUKI
④⑤⑥については、PI値と平均単価の関係を見るよりも、まずはPI値を高めるという努力をしてください。顧客にどうアピールしていくかが、オンリーワンを作り上げていくからです。
ただPI値アップを考える際に、注意事項がひとつだけあります。
PI値を活用するときに誤解される方が多いのが、「PI値なんて、価格を下げれば上がるものだ」という考え方です。
たしかにエブリデイ・マーケット業界や私のような野菜ビジネスでは、バラ売りというものがあります。バラ売りにすれば価格は下がります。
しかし、全体的にPI値を上げたことにはなりません。もしかしたら袋詰めのほうが顧客の求めているものなのかもしれません。そちらのPI値のほうが、グラフの上から見てもバランスのとれたところにあるかもしれません。
PI値とは、そのような判断を示してくれる大切な手段なのです。
しかし、目的は「顧客支持率アップ」で、数値的に客単価PI値が最高のところを目指すことです。
グラフに点在する商品を右上に引き上げてほしいのです。そして、同時に客数を伸ばしていくことです。
PI値アップが目的になってしまうと、客単価PI値はアップできません。利益もとれませんよ。
粗利額が同じ商品でも、顧客の声は違う
私は「儲ける」「儲かる」という言葉はほとんど使いません。
なぜか売り手側の都合でいっているように思えて使いません。その代わりに好んで使うのは、「稼ぐ」という言葉です。
「時を稼ぐ」「利益を稼ぐ」のほうが、私の心にはフィットします。「ロータス・メソッド」も、まさにこの言葉がぴったりで、1品1品の粗利をいかに積み上げるかを考えていきます。
ここで、一人当たりの顧客の利益という考え方が生まれます。これを「粗利PI値」、または「利益PI値」と呼んでいます。粗利PI値は粗利額を表しますが、考え方が違ってきます。
粗利PI値 = 粗利益 ÷ 客数(レジ通過客数)
これで粗利PI値(単位は円)を出すことができますが、計算式にPI値が入っていません。
ここには不都合が生じます。
たとえば、同じ粗利を出す2つの商品があるとします。1日に500人のレジ通過客がいて、どちらも平均単価は同じ100円。商品Aの粗利は1品につき30円、商品Bの粗利は1品につき60円です。どちらも6000円の粗利を出しました。
2つの商品の粗利PI値を計算します。
A 6000 ÷ 500 = 12(円)
B 6000 ÷ 500 = 12(円)
商品A、商品Bはどちらも同じ式になり、それぞれの商品の顧客一人当たりの粗利額が12円ということがわかります(これはこれで大事です)。
しかし、PI値をとり続けていると、粗利益は次の式で表すことができるようになります。
粗利益 = PI値 × 1品の粗利益 × 客数(レジ通過客数)
(PI値 × 1品の粗利益 = 粗利PI値)
PI値をとり始めたら、粗利PI値はこの式を使ってください。
AのPI値は40%、BのPI値は20%です(Aは200人が購入、Bは100人が購入したということは、すでにPI値をとっていればわかります)。
A 0.4 × 30 = 12
B 0.2 × 60 = 12
むろん、粗利PI値は12円で同じですが、PI値さえわかっていれば、顧客一人当たりの利益は売価、原価がわかっていればすぐに計算できることになります。
また、粗利額を見ただけでは同じ数字ですが、当然商品AのほうがPI値は高く、フロントエンド商品だということがわかります。商品Aに力を入れることはいうまでもありません。
つまり、粗利益をPI値から導き出すことによって、その商品のお店への貢献度がわかるのです。ですから、利益をアップするには、
- PI値をアップする
- 1品の利益(粗利)を上げる仕入れをする
この2点がポイントになります。
先ほどの例で考えてみると、商品BについてはPI値を高める努力をします。もし、粗利益を59円(単価を1円下げる)にしても、PI値を1%上げたほうが粗利PI値は上昇することがわかります。
B 0.21(1%アップ)× 59(1円下げる)= 12.39円
粗利PI値も毎日の積み重ねをもとに試行錯誤していきますが、この値を1円上げるだけで年間の粗利益も大きく変わってきます。
年間粗利益 = 粗利PI値 × 年間来店客数
たとえば、1日500人の顧客が来るとすると、年間の来店客数は18万2500人になり、それをこの式に当てはめると、1品の粗利PI値を1円上げるだけで18万2500円も稼げるわけです。
こんな商品を10品も作れば、年間で200万円近くも利益を上げられるのです。
エブリデイ・マーケットでは、こうした1円の勝負が毎日のように繰り返されています。
もしあなたが、日頃から粗利率を使っているのなら、粗利PI値と併用するとさらに効果的です。
あなたのビジネスであれば、PI値アップ、コストの削減で、さらに高い粗利PI値にできるのではないでしょうか。
ここで、コスト削減についても触れておきます。ふつう粗利益は「売上-コスト」で出すことができます。この売上はPI値を含めた式に落とし込めましたから、以下のような式で考えると純利益が出ます。
純利益 =[PI値 × 平均単価 × 客数]- コスト
([PI値 × 平均単価 × 客数]= 売上)
純利益を上げるには、大きく考えれば売上をアップさせるかコストをダウンさせるか、2つの努力しかないわけです。ただ、コストに関しては無理なく削減することが必要です。つまり、
- PI値(一人当たりの買上げ点数)× 平均単価 × 客数で売上をアップ
- コストをコントロールする
- 仕入原価 = 仕入体制を強化
- 人件費 = 売上アップ、生産性の適正化
- 在庫調整 = ロスの削減
- その他
応用!すべてのしくみが変わる
PI値は顧客の声そのものですから、PI値をアップさせようということであれば経営すべてに応用できます。
私はPI値をさらに広げて活用しています。
- 発注・仕入に活用する
- 作業シフトに活用する
- バックルーム(倉庫)、在庫管理に活用する
- 物流システムに活用する
- 商品開発に活用する
1. 発注・仕入に活用する
PI値は予測力もアップさせます。
PI値に基づいた発注公式は、
販売予測数量 = 予想来店顧客数 × PI値
です。そして、販売数量の予測は、
- 来店顧客数の予測
- PI値の予測
この2つから始まります。また、顧客の来店予測は、
- 過去のデータから予測する(週・月・年)
- 同じようなイベント・商品から顧客数を算出する
- 直勘から
最後のは、直感でなく直勘です。感じるというより、今までの経験に基づいた第六感で決めていきます。
そして、PI値の予測は、
- 過去のデータ(曜日・週・月・年)
- 価格帯(同じ商品でも価格帯によりPI値が変動する)
予想来店顧客数とPI値で、販売数量が予測できます。これだけでも発注の目安になります。
そこで、もう一歩踏み込んで発注数量を予測します。
発注数量 = 予想来店顧客数 × PI値 - 予想在庫数量
- 予想来店顧客数(日・期間で考える)
- PI値の予測(価格帯に気をつける)
- 予想在庫数量(閉店後の在庫数量)
とくに、予想来店顧客数とPI値の予想まで立てると、販売数量がわかります。
PI値に基づいて、今度は閉店在庫数量を予測し、販売予測数量をマイナスすることにより発注数量が決まります。
たとえば、明日の来店顧客数を1500人と予測したとします。そのとき、売価も確認します。
1500(人)× 20(%)= 30(個)
30個 - 10個(閉店時在庫数)= 20個(発注数量)
30個が、明日の販売予測数量になり、20個が発注数量になります。
この数値により、いくつ在庫を持てばよいのかの目安とするのです。
2. 作業シフトに活用する
PI値は作業オペレーションに活用できます。PI値の作業は、
- PI値(顧客支持率の高い商品)から優先する作業を決める
のひと言に限ります。
エブリデイ・マーケットには作業が限りなくあります。
そこで、作業の優先順位をつける意味でも、PI値を中心に作業を決めるのです。顧客も歓び、あなたも、あなたのスタッフも作業の優先順位がわかってきます。
私のお店では、ベテラン社員から順にPI値の高い商品を担当してもらっています。そして、パートさんにも商品の担当をまかせます。誰もにPI値という視点で担当の商品に愛着を持ってもらっています。
新入社員やパートさんがいきなりお店の看板商品を担当するのは負担(スーパーマーケットなどは部門で担当を分けているところが多い)ですから、アイテム別に担当を分けているのです。
こうすると、誰もにやる気が生まれます。もちろん「スピリット」の面でも差が出てくるのです。
3. バックルーム(倉庫)、在庫管理に活用する
商品には在庫があります。その在庫にもすべてPI値があります。これを「在庫PI値」といいます。
在庫PI値 = 在庫商品数 ÷ 客数(レジ通過客数)(%)
在庫PI値は、顧客に何個、金額でいくら在庫を負担していただいているかという発想からきたものです。在庫を顧客が負担するという発想はPI値ならでは発想です。
その在庫も、バックルーム(倉庫)の作業しやすい場所に、
- PI値の高い商品をおく
- PI値の低い商品の品質管理をとくに気をつける
ことが必要です。
PI値の高い商品ほど、動きが多い=作業が発生します。
ですから、作業しやすい場所におくことがポイントになります。
PI値の低い商品は、高額な商品(バックエンド商品)が多く、エブリデイ・マーケットなら「死に筋(動きが悪い)商品」の場合があるので、思い切って、早めに処分(見切り)してください。
4. 物流システムに活用する
商品には、物流がつきものです。
倉庫に商品がある場合や、問屋さんなどに商品を発注する場合、次のことを重視してください。
- PI値の高い商品の物流はスピード重視
- PI値の低い商品はクオリティ重視
マーケティングでいえば、
- フロントエンド商品(PI値の高い商品)の物流
- バックエンド商品(PI値の低い商品)の物流
という二段構えが最低限度必要です。
エブリデイ・マーケットの物流なら、
- 1便はPI値の高い商品
- 2便はPI値の低い商品
- その他
となります。
物流ということも、ビジネスでは重要になってきますので、ぜひあなたのビジネスでも応用してみてください。
5. 商品開発に活用する
私はゴルフはやりませんが、タイガー・ウッズ選手が好きです。
彼のゴルフレッスン書は、とても興味深く読むことができました。
通常、ゴルフレッスンでは、ドライバー(第1打)の練習から始めるのが常識です。けれど、彼のゴルフレッスン書は、パター(最終打)から教えていきます。
逆から教えていき、最終打がドライバーです。
まったく逆なアプローチです。
PI値を活用した商品開発も、まったく同じなのです。
メーカーや生産者の立場から商品を作るのでなく、タイガー・ウッズ選手のゴルフレッスンのように、パター(最終打)から逆算して、つまり顧客の要望に応じた商品開発をするのです。
PI値に基づく商品開発は、
- PI値の高い商品から商品開発する
- PI値の低い商品は採算ベースを検討してから着手する
の以上2点が挙げられます。
顧客の声であるPI値をもとに、メーカーなどが商品開発すればヒットする確率が高まります。
エブリデイ・マーケットの食品やスーパーマーケットのPB(プライベート・ブランド)などにも、PI値をもとに開発すれば、成功の確率はグーンと高まります。
従来のエブリデイ・マーケットのPB(プライベート・ブランド)作りの失敗のほとんどは、顧客のほしい商品でなく、PI値の低い、店側が儲かる商品という点で開発してしまうことが、失敗の理由として共通しています。
世界一のウォルマートの成功も同じ戦略だった
現在、世界のすべての産業で、最大の売上高を誇るのは、アメリカのウォルマート社(年商約27兆円)です。
売上高世界一の座は、1970年代以降、自動車メーカーのGMや石油会社のエリクソンモービルでしたが、21世紀に入りウォルマートが流通業界で初めて1位の座についたのです。
アメリカの、サービス業化の進行という構造変化を象徴しているといえましょう。ですから、日本の流通業も決して落胆することはありません。
そのウォルマートの創業者、サム・ウォルトンは、販売ノウハウについて、自伝のなかで次のように語っています。
『これはきわめて単純な原理である。同じころ、他の人々もそれに気づき、ついには全米の小売店の販売方法と消費者の購買方法を変えてしまったほどだ。
つまり、ある商品を八〇セントで仕入れたとして、それを一ドル二〇セントで売るよりも、
一ドルで売るほうが、三倍以上多く売れるという原理である。一個当たりの利益は半分だが、しかし三倍売れれば総利益はずっと大きくなる。簡単な話だが、これがまさにディスカウントの真髄なのだ。価格を安くして販売量を増やせば、高い価格をつけるより結局は儲かる。業界の言葉でいえば、「薄利多売で儲ける」である。』(『私のウォルマート商法 すべて小さく考えよ』講談社刊)
彼の世界一の販売ノウハウは、実は「ロータス・メソッド」の利益法の考え方と同じです。
粗利益 = PI値 × 平均粗利益 × 客数
ひとつの商品の粗利益を、半分に下げても、PI値は3倍になります。さらに、客数もアップするので、粗利益は増えるというわけです。サム・ウォルトンの考え方をPI値を使って解説すると、
トマトの粗利益 = 10%(PI値)× 40円(粗利益)× 1500人 = 6000円
サム・ウォルトン方式 = 30%(PI値)× 20円(粗利益)× 2000人 = 12000円
となり、1品単価(粗利益)は下がっても、PI値の上昇で客単価(粗利益)がアップし、さらに客数がアップして粗利益が増える(この場合、粗利益は2倍)という原理です。おわかりいただけますでしょうか。
PI値をアップしようとする「ロータス・メソッド」の販売方式も、サム・ウォルトン方式と同じ軌道上にあるのです。
余談になりますが、私の誕生日はウォルマート1号店開店日の7月2日です。とても身近に感じています。
以上「ロータス・メソッド」の実践を説明してきました。
難しいと感じた方も多いはずです。でも、PI値は顧客の声であるということだけは頭に入れておいてください。
「顧客の声=PI値」を知るだけでも、あなたのビジネスは大きく変わるのですから。
